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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)40号・昭49年(行ケ)50号 判決

一 前掲請求の原因のうち、原告を実用新案権者とするその主張の登録実用新案について、被告らのなした請求に基き登録を無効とする旨の審決の成立にいたる手続、考案の要旨および審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。

1 引用例記載の装置が(C)′のうち「クラツチ機素35と駆動軸33の前端とを自在継手34で連絡するとともに」という点を除き審決認定のとおりの構成であることは原告の認めて争わないところであり、成立に争いのない甲第二号証(引用例)によると、(C)′の構成のうち右に除外した点は審決認定のとおりの構成であることが認められる。

2 次で、本件考案の(A)、(C)の構成と引用例の装置の(A)′、(C)′の構成との異同を検討する。

(一) (A)′と(A)との構成の対比

前出甲第二号証および成立に争いのない甲第三号証(本件考案の実用新案公報)を対照して考えると、引用例の装置の(A)′の構成においては、運動取入れ軸21が変速歯車箱1内の下部を貫き、その頭部22を変速歯車箱1の後壁下部に露出し、これにクラツチ機素35が噛合し、その変速歯車箱は、本件考案の耕耘機ミツシヨン5に相当するとともに、架台3をも兼ねること、一方、前示本件考案の要旨はもとより、その明細書中考案の詳細な説明も、「動力を取出し架台3の後方に延長伝動」する(A)の構成の具体的態様については何ら限定していないことが認められるから、結局、引用例の装置の(A)´の構成は、耕耘機ミツシヨンたる変速歯車箱の一部より動力を取出し、これを架台たる変速歯車箱の後方に延長伝動するようにしたものであつて、正に本件考案の(A)の構成要件を備えているものというべきである。

原告は、本件考案の(A)の構成における架台3が、引用例とは異なり、ミツシヨンの構造を有せず、その中央部にミツシヨン5を取付けていることにより、「架台3の後方に延長伝動するようにし」た伝動装置は引用例の装置の(A)′の構成に欠如している旨を主張するが、本件考案の明細書には、その(A)の構成において、架台3が耕耘機ミツシヨンを兼ねることを除外し、あるいは、その位置関係を限定しているものと解されるような記載はなく、他にそのように解すべき根拠もないから、右主張は失当である。

(二) (C)′と(C)との構成の対比

前示本件考案の要旨と前出甲第三号証により認められるその明細書の考案の詳細な説明中「走行するとき旋回の場合は結合ピン13を支点として耕耘機とトレラーは左右屈折することができるが、耕耘機よりトレラーへの動力伝動装置も結合ピンの軸心C―C線上に結合点17が設けられているから、旋回時においても支障なくリヤーシヤフトへ動力を伝動することができる」との作用効果に関する記載とを併せ考えると、本件考案の(C)の構成は、(イ)結合ピン13は、耕耘機とトレラーとを結合する要素であるとともに、その軸心線が左右屈折の中心となつていること、(ロ)動力結合点17は、耕耘機側から取出し後方に延長伝動されるべき動力をトレラー側の伝動装置に伝達する点(部位としての)であるとともに、これを中心としてその動力を伝達する方向が左右に旋回し得るものであること及び(ハ)動力結合点17を結合ピン13の軸心線上に設けることを合せた点に意義があり、かつ、それ以外には格別限定されていないものと解するのが相当である。

原告は、右構成においては、上下に傘歯車を有する垂直伝動軸が限定的要件とされている旨を主張するが、前出甲第三号証によると、右のような構成の態様は本件考案の明細書および図面に実施例として示されているにすぎないことが認められ、これをもつて本件考案の必須要件と解すべき特段の事情もないから、右主張は採用するに由がない。

そして、前出甲第二、第三号証を対照して考えると、引用例の装置の(C)′の構成において、二つのジヤーナル24は、トラクター(耕耘機)と輸送ボギー(トレラー)を結合する要素であるとともに、その鉛直軸の軸心線が左右屈折の中心となつているから、本件考案の結合ピン13に相当し、また、自在継手34の十字ピンの交差点は、変速歯車箱1(耕耘機ミツシヨン)から取出した動力をボギー側の伝動装置に伝達する点(部位としての)であるとともに、これを中心としてその動力を伝達する方向が左右に旋回し得るものであるから、本件考案の動力結合点17に相当し、さらに、右交叉点は二つのジヤーナル24からなる鉛直軸の軸心線上に設けられているから、結局、右(C)′の構成は本件考案の(C)の構成における前記(イ)ないし(ハ)の三点をすべて充足していることが明らかであり、したがつて、当然、本件考案の(C)の構成要件を備えているものというべきである。

なお、原告は、本件考案は(C)の構成により耕耘機とトレラーとの屈折角度が九〇度を越える場合にも対応することができる点において引用例の装置と作用効果を異にすると主張するが、前出甲第三号証によれば、本件考案の明細書には、旋回時の対応については、前示のように「………旋回時においても支障なくリヤーシヤフトへ動力を伝動することができる」との記載があるのみであつて、他に格別の記載を認めることができない。そして、右記載中、「支障なく」という文言があるからといつて、それだけでは、(C)の構成により原告主張の場合にも対応することができるものとは解し難いのみならず、本件考案の(C)の構成の意義が前示の三点に止まるものと解される以上、右のような場合にも支障なく動力をリヤーシヤフトへ伝達できるという作用効果があるものとは容易に肯認することができない。したがつて、原告の右主張は失当というほかはない。

3 以上のとおりであるから、本件考案の(A)および(C)の構成要件をそれぞれ引用例の(A)′および(C)′の構成と同一であるとした審決の認定は正当というべきであつて、審決に原告主張の違法があるということはできない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

(A) 耕耘機ミツシヨンの一部より動力を取出し、架台3の後方に延長伝動するようにし、

(B) 一方、トレラー側はリヤーシヤフトより架台8前方のヒツチ金具12附近に至る伝動装置を設け、

(C) その双方の動力結合点17を耕耘機とトレラーとを結合する結合ピン13軸心線上C―Cに設けた

(D) 耕耘機に連結するトレラーの駆動装置

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